ウィンブルドン2015 決勝

 決勝戦のジョコビッチ対フェデラー戦は大変面白い試合になった。しかし、新聞報道ではジョコビッチの圧勝と書かれていた。これを見ると分かる通り、新聞記者は試合を見ずに記事を書いている。スコアは3-1で確かにジョコビッチの圧勝だ。しかし、実際の試合はもっと劇的な展開だった。

 この試合は実はフェデラーに有利な点がいくつもあった。まず、フェデラーはラケットを変えた効果でグランドストロークのパワーが上がっていた。また、トレーニングによりフットワークが大幅に改善しており、ジョコビッチ得意の振り回しが通用しない状態だった。そして、グラスコートのサーフェスは非常に速く、フェデラーのフラット気味のストロークが活きる環境だった。

 反面、フェデラーにはスタミナの問題があった。現在のフェデラーはトップパフォーマンスでは2セット程しか戦えない。しかし、試合は5セットマッチだ。フェデラーは最初の2セットを連取し、残りの3セットの内1つをサーブアンドボレーなどを駆使して体力を節約しながら獲得する必要があった。

 この点はジョコビッチ側にも分かっており、ジョコビッチは最初の2セットを何とか守り切れば、後は長期戦になり、スタミナで上回れると踏んでいた。そのためには少しでも自分を有利にする必要があった。

 具体的対策は3つだ。1つは深いボールを打つ事だ。芝生ではショートバウンドは処理が難しい。バウンドが不正確だからだ。これによりフェデラーのライジングを防ぐ事ができる。2つ目はセカンドサービスをバックハンドに高く弾ませる事だ。シングルハンドのフェデラーはこのボールを強打できない。従って、セカンドサーブを叩かれる心配が無くなるのだ。そして、最後がトップスピンロブの利用だ。これにより、フェデラーのネットプレーを封じる事ができるのだ。

 そして、実際の試合は予想以上に白熱した。フェデラーのストロークは強力で、明らかにジョコビッチを凌駕していた。結果はファーストセットをジョコビッチが取ったが、運次第ではフェデラーが獲得してもおかしくなかった。もちろん、ジョコビッチの守備力も素晴らしかった。優れたコートカバーリングでフェデラーの攻撃をしのぎ、深いボールでフェデラーの強打を難しくした。また、スピンを掛けたスピンサーブもフェデラーを苦しめた。誤算だったのはロブの使用で、ジョコビッチのボールはフェデラーの頭を越える事は無かった。

 しかし、白熱したのはこの2セットだけだった。第3セットからはフェデラーはポイントを早く切り上げる展開に切り替えた。そのためにサーブアンドボレーを多用した。これは一見、効果的に見えたが、実はスタミナが不足し、余裕が無くなったからだ。後半、フェデラーのミスが目立つようになった。

 結局、試合はスコアの上ではジョコビッチの圧勝になった。しかし、実際に試合を見たものは、短期であれば未だフェデラーがNo.1プレーヤである事を確信しただろう。しかし、メジャートーナメントのルールは長期戦である。スタミナを失った時点でチャンピオンの資格は剥奪されるのだ。この厳しさがプロの世界であり、他のビジネスの分野も変わりはないのだ。日本人は未だ製造技術では世界最高だと自慢している。しかし、総合的には最早、日本は三流国だ。一部の分野で特技があっても、ビジネスで敗北すれば敗者なのだ。

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